
先日5月2日にNHKアーカイヴスという番組で、キッスの初来日公演を収録したヤングミュージックショウが再放送された。観た人も結構居るんじゃないかと思うけど、あれこそ、オレが初めて体験したロックコンサートだった。1977年4月1日、日本武道館、桜が満開の季節だった。その1年位前からキッスにのめり込み、寝ても醒めてもキッス、キッスと大騒ぎしていた俺にとって、その日は真に待ち焦がれた、本当に特別な日だったのだよ。何たって夢にまで見たロックコンサート、しかも相手はキッス! 興奮するなと言う方が無理な話だ。1週間も前からソワソワ、ドキドキと落ち着かないったらない。擦り切れる程聴いたこのアルバムとかを毎日ターンテーブルに載っけては、その日を指折り数えて待っていた。その前にあった高校受験もただひたすらそれを励みにして乗り切った様なモンだ。
そしてその日はついにやって来た! 俺と友人達計4人は気合いを入れていざ武道館へ。俺はロックコンサート初見参という事でナメられちゃいかんとJEFF BECK(←知ってっか?....)のTシャツを着て出掛けた。しかしそれは雑誌の付録についてたアイロンプリントで白いトリムのTシャツに自分で付けたヤツといういまいち情けないシロモノだった。いーんだよ、とにかくロックコンサートに行くんだから!
武道館に集まって来るオニイさんやオネエさん達は皆カッコ良くて、長髪をなびかせ、いかにもロッカーという感じで俺は圧倒されてしまった。勿論キッスメイクをして、着物みたいな長いガウンにハイヒールブーツでキメてる奴も居たりして、それに比べたら俺達はどうにも子供でミジメだったなぁ.... 胸のベックもアイロンプリントだしなぁ.... 何しろ中学を卒業したばかりなのだから仕方ないけど。「早く大人になってロッカーの仲間入りしてえなあー」と本気で思った15の春でした。
ヤングミュージックショウで観るとおりコンサートは凄まじいモノだったのは言うまでもない。いや実際ナマはもっと凄かった!こんなデカイ音を聴いたのは生まれて初めてだ。前座のBOWWOWでまずショックを受けたけど、キッスの音量ときたら.... 今程システムの良くない武道館がミシミシとキシむような巨大な音の塊が渦を巻いて迫って来るようだった。1時間半の間俺はまばたきするのも惜しんで目を凝らし、歌い、叫んでいた。
全てが終わって俺達は皆放心状態のまま家路に着いた。帰り道にポールスタンレイのステップの真似をしたりしながらもまだ夢の中に居るような気分だった。俺はそしてちょっと哀しかった。待ち焦がれた日々が長かったからね。楽しみは一瞬にして終わってしまった。生涯忘れられない夜。その後1週間耳の奥では、エースフレイリーのフィードバックのようにキーンと耳鳴りがしっぱなしだったよ。
これはキッスの代表作にしてライヴアルバムの名盤中の名盤。キッスの栄光はここから始まった。初期の代表作を全て含み、またそれらは今日もプレイされるキッスクラシックスとして全く色褪せる事のない不滅のR&Rがギッシリ詰まっている。25年以上たった今でも俺の愛聴盤である。途中のMCも含めて全てがカッコイイと断言する。
MCと言えばオープニングに欠かせない有名なセリフ「YOU WANTED THE BEST, YOU GOT THE BEST, THE HOTTEST BAND IN THE WORLD,
KIーーSS!!」だけど、このアルバムではまだ「WORLD」が「LAND」つまり「世界」ではなく「全米」と言っている。全米を制覇し、世界へと駆け上がろうとする若きロックンローラー達の姿をとらえた貴重なドキュメントでもあると俺は思うのだ。