2005年11月のロックンロール・レコード

[SIDE 26]  SOUND AFFECTS / THE JAM(1980)

前作『SETTING SONS』から約1年振りに発表された第5作目。80年代の幕明けを告げるこの年、ジャムは押しも押されぬ英国No.1グループとなった。『SETTING SONS』ツアーはSOLD OUTが続き、英N.M.E(ニュー ミュージカル エクスプレス)紙の読者人気投票でベストグループ、ギタリスト、ベーシスト、ドラマー、ベストアルバムなど6部門で首位となり、3月にはその勢いを持続したニューシングル「GOING UNDERGROUND」C/W「THE DREAMS OF CHILDREN」を発表、全英チャート初登場1位を獲得!(これは1973年のスレイド以来の快挙である)この名曲を引っ提げて、ジャムは日本にやってきた、7月の事だ。俺が観たのは7月7日の日本青年館、パンクやモッズ、ハードコアに2 TONE野郎等が押しかけたその前で、彼等はビートに溢れた生きのいいR&Rを披露してくれた。MCらしきものは殆ど無く、また笑顔を振り撒く事も無く、曲名だけを告げ次から次へと繰り出される武骨なまでの曲達、歌う時も客席に視線をやらず、ひたすらマイクに向かって吠えるアングリーヤングマン、ポール。アルバムの表情とはまた異なるストイックさで貫かれていたそのステージは忘れ難い。
ジャムはクラッシュのようにアメリカで成功を収める事が出来なかったが、その理由がもしこの真っ直ぐ過ぎてユーモアのセンスも無さそうな(?)ポール ウェラーの蒼い正義感や、時に愚直なまでの気真面目さにあるとしても、それこそジャムがジャムたる所以なのである。そして俺はそんな所が大好きなんだ。
その日本公演でも何曲か新曲を聴かせてくれたから、次のアルバムへの期待は募る一方だったけど、ステージでポールが言った通り先行シングルがまず8月に出た。『START!』というその曲はビートルズの「TAXMAN」そっくりで随分驚いたが、ジャムがニューサイケデリックな方向に興味を抱いている事は「THE DREAMS OF CHILDREN」等で判っていたからね、しかしこの曲までもが全英チャートNo.1に連続で輝くとは!ジャムの絶大なる人気が判ろうというものだ。そしてアルバムは11月に登場した。
あー…またしても傑作の誕生である、前作がビートルズの『RUBBER SOUL』だとするなら今作は『REVOLVER』、実験的な音作りを追求しつつジャムは更にサウンドを研ぎ澄まして我々に提示してくれた。ライヴの直線的なエネルギーとは別次元の音&質感で迫ってくる。全体像は飽くまでもシンプル、しかしギター!硬質だが曲毎に表情を変えるギターと言ったらもう…「PRETTY GREEN」ではギャギーン!と空を斬ったかと思えば「START!」のGソロではグニャリとサイケデリックにねじ曲がり、こちらのイマジネーションを刺激してくる。ポールのヴォーカルも初期の頃のように作為的な所が無く、素直で綺麗な歌い方、これがまた凛々しくて良い。テープの逆回転から始まる「DREAM TIME」や「MAN IN THE CORNER SHOP」のなんと雄弁な事か、アコースティックギターを掻き鳴らし歌われる名曲「THAT'S ENTERTAINMENT」など聴き所は多い。「BOY ABOUT TOWN」で鳴り響くトランペットはまるで「PENNY LANE」の様だ。そしてそしてサウンドミキシング!スネアは軽いがスコーンと抜けが良く、ベースは重く、芯が太くて全体を支えてる感じだ。ギターにはミッドとローが無い異様にエキセントリックな音だが奥行きがあって深い、しかも肉声のように表情豊か。時に美しく、時に悪魔のように意地悪だ。こんなギターを鳴らせる人は他にジミー ペイジ位のものだろう。多分相当の神経を使い、時間を費やしたに違いないと思わせるまったく凄い音作りだ。技術ばかりが持て囃される傾向のあった80年代の日本ロックシーンに於いて、(トトやジャーニーの時代だったもんな…)こういうセンスはなかなか理解されず評価もされねぇ、だから駄目なんだよ日本のシーンは!俺達で変えて行こうぜ!なんて当時のバンドメンバー達と鼻息荒く語り合ったものだ。そうこの頃から本格的にバンドを始めたんだった、同じクラスのジョー被れの奴とクラッシュ目指した4人組でね。正式なベーシストが居なくて捜していたんだったな、チラシ撒いたりプレイヤー誌にメン募のハガキ出したりして…
80年代を迎えてパンク/ニューウェイヴシーンも大きく様変わりしつつあった。レゲエ&ダブの台頭、2 TONEブームにモッズリヴァイヴァル、ジョン ライドンのP.I.L、GANG OF FOUR等が絶賛され、THE POP GROUPやSLITS等レゲエ、ファンクからフリージャズまで丸呑みしたアヴァンギャルド〜オルタネイティブの登場、ニューロマンティックはもう少し後だがポストパンクの波が一気に押し寄せて来た頃である。毎週のように刺激的なニュースが飛び交い、レコードは続々とリリースされていた。1977年にデビューしたジャムやクラッシュが新しい方向性を探り、格闘していたのも当然の事だろう。両者とも同じ場所に留まる事を良しとしない、前進あるのみのバンドだから。片やカリブ海を巡りダブやレゲエを自らの骨肉とした後アメリカのルーツミュージックに思いを馳せ、世界を見渡し、旅を続けるWEST WAYの4人組。片や飽くまで英国に生きる人々の生活慣習にこだわり、60年代からのブリティッシュサウンドを現代的に再構築させ、迷える大英帝国の未来を案ずるウォキングのスクールメイト3人組。
そう、俺が愛した2大バンドはかくも異なっていたが、それぞれが突出した個性と世界観を持っていたのだった。
(2005.11.17)

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