
キッスの代表作と言えばまず『ALIVE!』、そしてスタジオ作品ではやはり『DESTROYER』かな、俺には。1976年春、エアロスミスよりひと足早くキッスも大変貌を遂げた。
レコードに針を落とす、まず主人公がキッチンで食事か何かしてるようだ(俺にはそんな風に聞こえるんだけど…)。ラジオからはハイウェイでの自動車事故を知らせるニュースが流れている、ガレージから愛車に乗り込んだ彼はエンジンをかける、カー・ステレオからは「ROCK AND ROLL ALL NITE」のライヴ・ヴァージョンが…一緒に鼻歌を歌いながらご機嫌な彼、自分に待ち受ける運命も知らずアクセルを蒸し、いざ出発〜「DETROIT ROCK CITY」のイントロが始まる。このオープニングだけでこれがトンデモナイ作品である事が解った。最後は壮絶なブレーキとクラッシュ音、爆発と共に車は大炎上して終わる、そこからギターのフィードバックが地獄の底から響いて来ると2曲目の「KING OF THE NIGHT TIME WORLD」が始まる。凄い!中学生の耳には充分過ぎるほど刺激的な2連発だった。
ストリングスやコーラス隊も配したドラマチックな作風はそれまでのキッスのスタジオ作品には無かったもので、『ALIVE!』で掴んだステイタスをより確かなモノにしようとするバンドの意気込みが伝わってくるようだ。 ライヴへの招待状に過ぎなかったそれまでのアルバム作りから、時間と予算をタップリ掛けた意欲作。『DESTROYER』はキッスをアリーナ・ロック・バンドの頂点に押し上げ、同時に日本にも熱烈なキッス・アーミーを産む結果となったのだ。勿論俺もその一人なんだけどね。
特に俺が好きなのはB面の流れ、ポール・スタンレイの「FLAMING YOUTH」からジーン・シモンズらしいタイトルの「SWEET PAIN」、ロック・アンセムの名曲「SHOUT IT OUT LOUD」、ピーター・クリスの歌う切々としたバラード「BETH」を経て、ビートルズを感じるキッス節「DO YOU LOVE ME」まで、まるで短編映画を見ているようにイマジネーションを掻き立てられるんだ、俺は。そう、つまりライヴ・アクトでのし上がったキッスが、今度は音によってイメージという名の心の視覚に訴えようとしたのだと思う。見事その狙いは成功し、30年を経た今も『DESTROYER』はバンドの代表作として少しもその輝きを失っていないし、俺の愛聴盤であり続けている。
そうなんだ、1976年、俺はロックにどっぷりとハマったのだ。あくまでリスナーとしてではあるが、ロック・スターに憧れ、ロング・ヘアーに、プラットフォーム・ブーツにシビレたのだった。振り返ればいつも今の自分の原点として、その年は特別な想いを心に抱かせる。
『DESTROYER』に合わせた空前のスケールのツアーをスタートさせたキッス、そのタイトルは「SPIRIT OF '76」…何だか象徴的ではないか!

1976年のロンドンはパンク旋風が吹き荒れた熱い夏だったのかも知れないが、東京に住む中学生にはロンドンはあまりに遠かったし、その熱狂を知る術もなかった。そんな俺にとって1976年の夏、最も熱かったのはこのエアロスミス。初期の彼らはキッスと共に、デンジャラスでスリリングな匂いを持ったバンドだった、それはまさに若き野獣達という表現がピッタリで新しい世代の為のロック・グループであった、そう30年も前の話じゃからのう…(笑)
1976年の夏に聴き狂った傑作、それが『ROCKS』。ジャケットに並ぶ5個のダイヤモンドは彼らの自信の表れなんだろうな。最も上質でハードなロックが詰まってるという訳だ。1、2枚目も好きだけどエアロが化けたのは前作『TOYS IN THE ATTIC』から。タイトル曲の引き締まったハードな音に「おおーっ!」とファンになった俺だから、このアルバムへの期待は大きかったのだ。そしてそれは裏切られるどころか期待以上のモノだった… 捨て曲なし!代表曲「BACK IN THE SADDLE」は勿論、続くファンキーな「LAST CHILD」も最高、ここではブラッド・ウィットフォードが見事なリード・ギターを聴かせる。ジョー・ペリーの陰に隠れがちな地味な彼だがこの人は本当に上手いよ。フレーズにワビサビがある。対象的にジョー・ペリーのギターには泣きの要素が殆ど無く全てリフの延長のような感じ、ひたすら弾いて弾いて弾きまくる。そのピッキングは結構細かくて正確だ。ジェフ・ベックに影響されたちょっとクセのある変わったフレーズがあって、ルックスと共にそれが大きな魅力である。アルバム中のフェイバリット・ソングである3曲目「RATS IN THE CELLAR」、続く「CONBINATION」等は俺のイメージするジョーの個性が良く出てる曲だ、すげぇテンション高いしカッチョイイ!このA面4曲はハード・ロック最強のA面だな、俺には。
B面に移ってもクオリティ、テンション共に高い。ストーンズ+ドールズ風ポップな「SICK AS A DOG」、ツェッペリン並にヘヴィな「NOBODY'S FAULT」(タイトルまで似てる)、サイケな「GET THE LEAD OUT」、これぞエアロR&R「LICK AND A PROMISE」、最後はビートルズ風バラード「HOME TONIGHT」(ジョーのギターにはここでも泣きがない!) 完璧な流れ、各曲の個性、間違いなく最高傑作だと思う。
スティーヴン・タイラー&ジョー・ペリーはこの時期、最高のロック・アイコンだった、ジャガー&リチャーズよりプラント&ペイジよりも若くて美しく、音楽雑誌のグラビアを毎月賑わす身近な憧れのロック・スターだった。まさに俺達世代の為の!それが重要だったのさ。翌年2月の初来日公演は高校受験と重なってしまい、観に行く事は出来なかった。今もそれは残念でたまらない、俺がエアロを観れたのはそれから10年後の事だった。1曲目は「RATS IN THE SELLAR」…!心はあの夏休みへと一気に飛んで行ったのだった。