2006年12月のロックンロール・レコード

[SIDE 40]  WIRED / JEFF BECK(1976)

1976年の収穫の1つにジェフ・ベックとの出会いがあった。この不世出のギタリストの事は以前から気になっていたけれど、レコードを買って聴いてみようというきっかけが中々無かった。そんな時、タイミング良く出たのがこの『ワイアード』、音楽雑誌等では「神業!」とか「豪快!、鮮烈!、壮絶!」と言った文字が躍り、「ロック魂を金縛り(ワイヤード)にする傑作中の傑作!」とラジオでも特集が組まれたりと、かなり話題になっていたのを覚えている。俺としても何だか良く判らないけど、これは絶対聴かなければ!と思い、買った訳である。自分が何となくホンモノのロック・ファンになった気がして、嬉しかったよ。同時にこれも何となくだけど1つオトナになった気にもなったものだ。
どんなにスゲェアルバムだろうと期待で針を降ろしてみたものの…またまた何だか良く判らなかった…中学生の俺がそれまで聴いてきたロックとは全く違うモノに聴こえたし、ロックと言うよりそれは当時流行しつつあったジャズ/フュージョンという音だったのだから。しかも全編インストゥルメンタルで、つまり歌がないから、キャッチーなサビやコーラスも無い、当たり前だけど…。しかも当時の俺はギターが弾けなかった!これが致命的だ、物凄く速かったりスローだったりと様々なギターが鳴っているが、どこがどう凄いのか、聴き馴れない曲調のせいもあって理解出来なかったという事だろう。ギターが弾けなくても判るビートルズやクイーン、キッス、パープル等の持つわかり易さ、カッコ良いギター・リフ、心を揺さぶるシャウト、そういったモノとは別次元のサウンドがそこにあった。まぁストーンズを初めて聴いた時も強烈で独特な違和感みたいなものを感じたんだけど、ストーンズには一発でノックアウトされるギター・リフと噛み付くヴォーカルがあったからなぁ…
それでも俺は『ワイアード』を毎日一生懸命聴いて、その良さを判ろうとしたんだ。変幻自在に表情を変化させるベックのギター、シンセサイザーを操るヤン・ハマーと激しいバトルを繰り広げ、物凄いスピードで空気を切り裂いたかと思うと、今度はしっとりと歌うようにフレーズを紡いでいく。言葉を持たないベックだからこその音色の雄弁さ、圧倒的なテクニックと独自性、そういったものに新たな魅力を見出だす事が出来るようになっていった。
そう、このアルバムをきっかけにベック・ファンになった俺は、前作の『BLOW BYBLOW』からB.B&A、ジェフ・ベック・グループ、そしてヤードバーズと遡って聴いていった訳だが、音楽性はそれぞれの時期で違うけれど、ベックのギターは一貫している。上手いのは当然として、常に革新的だ。ブルースやロカビリー等をルーツとしているが、その枠からハミ出すオリジナリティを持っているのが彼だ。突然突拍子もないフレーズを挟み込んで来たり、閃きだけのギリギリのプレイもあったりしてそこが魅力、好きだ。ギターを弾く様になってから『ワイアード』は一層の愛聴盤になったのは勿論だが、同時に確信した事もある。鉄壁な演奏者をバックに暴れまくるベックのギター、精密機械に放り込まれてもハミ出してしまうそのギターは、やはり圧倒的にロックだと言いたい。だからこそベックは俺のギター・ヒーローの1人なのである。そう言えば30年前のあの頃はベイ・シティ・ローラーズの大ブームで学校のロック好きな女の子達(少なかったけど)は皆タータン・チェックに夢中だった、校内でもロック好きでわりと有名だった俺は、わざとこの『ワイアード』のジャケを抱えて彼女達のたむろする廊下を通り過ぎたのだった。「俺は今こんな本格的なヤツを聴いてんだぜ!」と言わんばかりにね。あの頃は誰よりもロックに詳しくなりたくてしょうがなかったマセタ子供だったんだ、俺は。
(2006.12.13)

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