
北アイルランドのベルファースト出身、スティッフ・リトル・フィンガーズと出会ったのは彼らのデビュー・アルバム『INFLAMMABLE MATERIAL』が発売されて間もない頃だったと思う。当時出入りしていた今は無き原宿のパンク・ショップ「SMASH」で流れていたのを耳にした時だ。当時一緒にやっていたバンドのヴォーカルが購入したんだったかな?、とにかくその後何度となく聴いた記憶があるよ。
1979〜80年頃を思い返してみると、その頃はインディペンデント・レーベルがロンドンを中心に誕生、設立され、様々なバンドがレコード(主にシングル)をリリースし始めた頃だった。パンクからニュー・ウェイヴへとシーン自体活気があり中々面白い時期だったなぁ。そんな状況の中S.L.Fはインディー・レーベルの中でも代表的な「ROUGH TRADE」から1stアルバムを発表した。一足先に自主制作で出したデビュー・シングル「ALTERNATIVE ULSTER」もその頃同レーベルから再発された筈だ。でも「ROUGH TRADE」は日本のレコード会社と配給契約が無かったからアルバムもシングルも日本では未発売だったな。
その1stの1曲目「WASTED LIFE」は文句なしのカッコ良い曲で大好きなんだけど、初めて耳にした時は正直戸惑ってしまったんだ、俺は。80年代に突入するこの時、かの『LONDON CALLING』、または『SETTING SONS』、レゲエの台頭にスペシャルズやP.I.Lのデビューと、誰もがこれからパンクは何処に向かうのか、そして新しい時代のサウンドが生まれて来るのを興味深く見つめ、期待していた時代だった。俺もそんな1人だったし、廻りのそんなムードの中でワクワクしているロック少年でもあったんだ。
そんな時、耳に飛び込んできたS.L.Fの音は荒々しく、まるでクラッシュが1stアルバムに戻ってしまったかの様なチープなガレージ・サウンドで、そのハード・ロック然としたギターやドスの効いたヴォーカルがやけに古く感じられて、「何を今更初期ハード・パンクなんだ?時は80年代を迎えようと云うのに…」そんな風に思ったのを覚えてるよ。レゲエを取り入れ実際クラッシュからの影響を口にしていた彼ら。今思えば当時の北アイルランドやベルファーストの切羽詰まった状況がアノ音に反映されていたのだろうし、恐らく彼らが観たであろう「生」クラッシュの壮絶なギグから受けた衝撃も含み、1stアルバムは成立していると勝手に俺は思っている。当時の評判としてもクラッシュの弟バンド的に言われていたもの。
1stの話ばっかりになってしまった…さて、暫く時が経ってからS.L.Fの2枚目が出ると愛読していた「音楽専科」誌で知った訳だが、正直「ふーん…」位に思ってたんだ、全英チャートに入った先行シングル「AT THE EDGE」を聴くまでは!ベースとドラムから始まるイントロ〜軽い歌のヴァースから一転ハードに展開するサウンド、ショックを受けた、カッコイイ!音は洗練され彼らのハード・ロック・マナーに則った持ち味が見事な成長を遂げている。アルバムを買ってまたぶっ飛んだ、2本のギターを生かした歯切れの良いリフ、硬質だが妙に軽く、エフェクトを掛けたベース、フレーズはキャッチーである。ドコドコとよく転がるドラム。ジェイク・バーンズのヴォーカルは相変わらずしゃがれ声だが青い切なさを感じさせる。そうS.L.Fの良さはこの「燃える青春」的なところなのだ!
2曲目の「WAIT AND SEE」が大好きだ、途中からレゲエにリズムが変わる所なんか最高で、当時お手本にしてオリジナルに取り入れていたよ。ストラマーズの「DAYS」なんかに今も確実に受け継がれているものだ。そのレゲエの解釈も飽くまでギター・アンサンブルを第一に考えたオリジナリティのあるもので偉い。ラストのドラマチックな「TIN SOLDIERS」のシン・リジィばりの泣きツインリード・ソロにも驚かされたものだ。
今でも愛聴してるこのアルバム、ギター・ロックの最高カッコイイお手本の一つであり、俺にとっては強烈な「青春」の一枚である。S.L.Fは次の『GO FOR IT』(名盤!)で更にポップな方向へと進んで行った、青い切なさをずっと持ち続けたまま。
最後にただのバーコードだと思ってたジャケットだが、『NOBODY'S HEROES』をめっちゃ縦長に書いたものだと気付いたのは相当後になってからの事でした。