
幻想的なアルペジオがゆっくりとフェイド・インしてくる、その後の期待を煽り起てるかのように…と、一転烈しいビートに乗ったジミー・ペイジのカッチョイイギター・リフが炸裂し、ボンゾのドラムが怒涛の様に>押し寄せる。ジョン・ポール・ジョーンズのベースは空ピックの音を混ぜつつ重く響く。ヴォーカリストは静かな歌い出しだ、ロバートプラントがこの壮大なるドラマを語りかけて来るように…。これが王者の貫禄か、疾走しながらもズッシリとした手応えのサウンドと迫力。そう、この『PRESENCE』のオープニング「ACHILLES LAST STAND」との出会いによって俺のツェッペリンに対する評価は絶対的なものとなった(ちょっと偉そうだが)。しかし何なんだこのゴリ押しのパワーは!立体感のある新鮮な音は!スタジオ・ライヴのようで実は凝った音色のギターは!と俺は感動してしまった。しかもこの曲は10分22秒もあるにも係わらず、一切ダレる事なく緊張感を伴ったまま一気に駆け抜けてしまう。普通なら途中でスロー・テンポになるとか、プログレ的な展開を見せるのが定石だろう。それなのに繰り返しリフを積み上げながらパワーで押しまくって最後またアルペジオでフェイド・アウトして行く。凄い!お見事!俺には未だに10分もある曲とは到底思えない。途中の素晴らしいギター・ソロを含めジミー・ペイジの鬼気迫るプレイが堪能できる。
よくジミー・ペイジはギターが下手だとか言われる。確かにクラプトンやベックやリッチーに較べたらそうかも知れない、フレーズが余りのピッキングの細かさ故つんのめったり、指が縺れたりする。(後期になる程プレイは危なっかしくなる…)おざなりな手癖フレーズも多>いけれど、レコーディングに於ける神経質とも言える音色への気配りとオーヴァー・ダビングの手法は見事なものである。ライヴに於いては強引なまでに武骨なプレイで押しまくり、ヴァイオリンの弓やテルミンを屈指しつつ、華麗なアクションでファンを魅了する、そしてレス・ポールを膝の辺りまで下げたスタイルも含めフォロワーをたくさん生み出したスーパー・ギタリストなのである。ジミーペイジは上手いんじゃなくてカッコイイのだ、だから俺は好きなのだ、そういう事。
このアルバムのハイライトは「ACHILLES〜」ともう1曲、B−1の「NOBODY'S FAULT BUT MINE」。ブレイクとキメを巧みに使った、これぞゼップ流ハード・ロックの極めつけという曲、いかにもライヴ映えしそうだ。このアルバムはこの2曲のためにあると言っても過言ではないと思う。
ツェッペリンはブルースからスタートし、中近東のアラブや北アフリカのモロッコ等のエキゾチックなメロディとサウンドを取り入れながら独自のロックを生み出した、出会いとなった前作『PHYSICAL GRAFFITI』はその名のとおり落書きのように雑多な曲が並び、多様な音楽性を持ったバンドだという事を教えてくれた訳だが、その1年後の『PRESENCE』に於いて徹頭徹尾ハードな音を聴かせてくれ、結果的に俺は彼らの大ファンになってしまった。更にこの年には映画『THE SONG REMAINS THE SAME』のサウンド・トラックとして同名のライヴ・アルバムまでリリースされてダメ押しされたのだった。その映画は翌年夏公開されたが渋谷公園通りにあった渋谷ジョイ・シネマの前はファンが押し駆けて物凄い行列が出来、その中に混じってワクワクしながら映画を観に行ったのを良く覚えている。まるでコンサートを観に来たかのような凄い人数だったな。俺は来日公演を切に願っていたが結果それは叶わぬ夢に終わったのだった。