2007年12月のロックンロール・レコード

[SIDE 49]  THE LAST POST / CARBON/SILICON(2007)

遂に出たか!という感じである。ミック・ジョーンズの新バンド、カーボン/シリコンのフル・アルバム。俺は待っていたよ、ミックの復活を。
ジョーが亡くなった2002年12月から年が明け、追悼番組がTVでいくつか放映され、ミックやトッパーやグレン・マトロックらのインタビューが流れたのを見たが、その中でミックは元ジェネレーション X、いやもっと言ったら伝説のロンドン SS時代からの友人トニー・ジェイムスとカーボン/シリコンなるバンドを始めたと語っていた。俺は勿論嬉しかったが不安でもあった。過大な期待はもうしない方が良いのではないかとの想いもあった。だってリバティーンズのプロデュース以外は主だった音楽活動はしていなかったし、半分リタイアしていたようなものではないか、今更オジサン・バンドでR&Rがやれるのだろうか?ダンス・ミュージックへの天才的なアプローチは果たして健在なのか?熱烈なファンだからこその心配ってヤツだ。しかもそのTV番組で流れた彼等のライブ映像、曲は触りだけでよく判らないし外見的な衰えも気になって何やら情けないモノに写った。俺としても気持ちは複雑だったんだ。それでもミックが自分なりの音楽をまたクリエイトする気になったという事実だけで、その質は置いといても本当は充分なんだけれどね。(SIDE43を読めば判ってくれるだろ笑)
それまで音源はネット配信のみという形だったが、とうとうCDフォーマットでその全貌を現してくれた。クラッシュの「CAPITOL RADIO TWO」を思わせるアコースティック・ギターのイントロから一転アップ・テンポのポップなギター・リフに導かれ「THE NEWS」がスタートした瞬間からもうミック・ワールド全開、ミックのセンスは少しの鈍りもない事が判った。クラッシュのポップ・サイドとB.A.Dのエレクトロ・ダンス・ミュージックをそのまま継承したミックならではのR&Rだ。心なしか歌声にも気合いが入っている。ゆったりした2曲目の「THE MAGIC SUITCASE」で聴かれるGソロなんてまさにミック、またまた俺はクーッ!となってしまった訳である。更に驚くべきは3曲目の「THE WHOLE TRUTH」、なんとクラッシュ「1977」のリフを再演、キンクスの「ALL DAY AND ALL OF THE NIGHT」と合体した様な曲に仕上げている。歌にも力が入ってるし「NOTHING BUT THE TRUTH…」と連呼される歌詞なんかはクラッシュで最も過激な歌の一つと言われる「GUNS ON THE ROOF」を思い出してしまった。そうだ、これはミックがジョーに捧げた曲ではないか、俺にはそう思えてならない。
ジョーの死の直前、ステージに飛び入りしての共演、そして突然のジョーの死、この運命的な出来事がミックに与えたもの、それは判らない。しかしミックは再び自らの音楽を鳴らし、シーンに帰って来た。そうこれはR&Rである、素晴らしいR&Rアルバム。2007年も終わろうとするこの時期に届けられた最高のクリスマス・プレゼントとなった。
(2007.12.21)

[SIDE 48]  SANDINISTA! / THE CLASH(1980)

この3枚組超大作を前にして何と言ったら良いのだろうか、言葉では言い表せない程大好きなアルバム。無人島には勿論持って行く、1枚だけという事ならやはり俺はこのアルバムを選ぶだろう。死ぬ時は棺桶に一緒に持って行くぞってなもんだ。何故なら『SANDINISTA!』にはR&Rの全てがあるから。確信と迷い、喜びと悲しみ、力強さと悩める魂が入り混じった「歌」がそこにある。そして同時にこれはクラッシュが辿り着いた一つの到達点なのである。
カムデン・タウンのおんぼろリハーサル場で生まれたラフなクラッシュ型パンク・ロックはおよそ3年余りの月日を経てここまで進化/成長を遂げた、それはちょっとした驚きでもあった。音楽的に確かなバックグラウンドを持ったバンドだという事はデビュー当時から判っていたが、これほどの柔軟さと器用さを持っていようとは…共に同じ時代を生きたリアルタイム・ファンに与えた衝撃とその影響は果てしない程大きかったと、今振り返って思う、本当に。
N.Yで流行しつつあったヒップホップから始まりモータウンR&B、レゲエ/ダブは勿論、カリプソにロカビリー、ジャズからゴスペル等、今興味のあるスタイルは全てやってしまえ!とばかりに放り込まれた曲たち。その向こうには、最後のオリジナル・パンク・ヒーローとして昔のイメージに固執するファンの非難を浴びながらも、喜々としてサウンドの旅を楽しむメンバーの顔が浮かんで来るようだ。落ち着いたサウンドだが沈み込んだ印象は決してない。そしてサウンドは変化してもそこには変わらぬジョーの歌声があった。これは個人的にとても大事な事だ。俺はこのアルバムで聴かれるジョーの歌声が1番好きなのだ。勿論初期の荒々しい歌も最高だけど。一皮剥けたこの落ち着きは『LONDON CALLING』の成功が関係してるのだろう、「I DON'T WANNA SHOUT…」と歌われた『LONDON〜』にはまだどこか吹っ切れないジョーの姿があったように思う。周囲からの期待を受けつつも吠えるストラマーのイメージから抜け出そうとあがき苛立ちを感じていた、そんな時期ではなかったか。ヤケクソなんて言ったら失礼だが、あー、悩みながら新しい自分を求め唄ってんだろうなぁ的なものを感じたのだ。完成したアルバムはコアなパンクスの非難を浴びながらも世界的に大成功し、クラッシュは証明した、その方法論が間違っていなかった事を。その自信を受け、吹っ切れたのがこのサウンドでありジョーの歌声なのだと思う。ここで聴かれるジョーの歌は確信に満ちていてとても優しい。同時に前進あるのみと突き進むバンドの強い意志を反映した素晴らしいものである。
「今度はN.Y辺りのサウンドを取り入れてファンキーにやってるんだ、みんなガッカリするぜ」発売前のインタビューでジョーはそう語っていた。俺の期待は高まるばかりだったけど、実際に印象的でクオリティの高い楽曲揃いであった。何年経っても飽きる事がない。
「THE MAGNIFICENT SEVEN」から「HITSVILLE U.K.」と続くオープニングは彼等がアメリカ・ツアーから得た財産の大きさを感じさせるし、戦いには勝てそうもないがとにかく進むのだと唄う「REBEL WALTZ」を始め、「ONE MORE TIME」、「CORNER SOUL」、「LET'S GO CRAZY」、「BROADWAY」、「THE CALL UP」、「WASHINGTON BULLETS」、「CARLIE DON'T SURF」、「THE STREET PARADE」、…好きな曲をあげたらきりがない、こうした曲に混ざって鳴らされるクラッシュ型R&R「SOMEBODY GOT MURDERED」や「POLICE ON MY BACK」、「UP IN HEAVEN」がまたカッコ良く響いて来る。
クラッシュのアルバムは全て日本盤の発売を待って買っていた(当時は1〜2ケ月遅れるのが普通)、歌詞が読みたかったからだがいつも待ち切れなくて入荷の噂を聞いたらすぐ輸入盤店に駆け付けジャケをチェックした。新宿レコードで目の当たりにした『SANDINISTA!』のジャケには感動したものだ。モノクロ写真に赤と黒の世界、ミックがヘルメット被ってんじゃん!と友人と盛り上がったよ。時は1980年、俺は前年結成したTHE CONTROL改めTHE EYESというバンドをやっていた。プロになるとか言う前にまず曲を作ってステージに立つのが目標だった、そこでクラッシュのように熱くプレイする、やりたいのはただそれだけだった。3コードとちょっとだけ知ってたマイナーコードを精一杯屈指してパンクロックと拙いレゲエなんかを作っていた。このバンドは俺の出発点として今も忘れる事はない。そしてそんな時代に聴き狂ったこの『SANDINISTA!』はいつの時代にも俺の目標であり、「パンクとは音楽スタイルを意味しない」とのアティテュードは目指す荒野に高く掲げられた一本の旗であり続けている。
PS.写真は1980年秋〜冬、THE EYES時代。あの頃は普段から頻繁にメンバーとツルんでは時間を忘れてロックの話しばかりしていた。才能はともかく燃え上がる想いと時間だけはタップリあったんだな。当時のなかなか面白い話もあるけど、それはまた折りを見て書きたいと思う。
(2007.12.09)

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