
久しぶりの音源リリース、BASEMENT WISE Vol.2とセットでの発売である。言うまでもないがこれはBASEMENT WISEのオマケなどでは決してない、2008年の第1弾としてストラマーズが自信を持って発表する新曲だ。熱心なストラマーズ・フリークが待ち望んでいたように、我々も待っていたのだよ!その喜びを爆発させつつのレコーディングだったが、『WILD ROMANCE』以降、更にタイトになったノリとふくよかさを増した表現力、自分自身そんなバンドの成長ぶりを実感出来た訳で、その成果は聴いた人にも感じて貰える事だろう。そして、そんなサウンドに乗った岩田の熱き歌声、もはや上手いとか下手とかいうレベルで評価される事を拒絶するかの如く切実な響きを持っている。ただ核心だけをこちらに叩き付けるようなパワーは岩田の真骨頂だと感じる、ぐっと来るか来ないか、それだけ。それがロックではないだろうか。
ギター・サウンドについて少し触れさせてもらうと、今回俺はマーシャルJCM800を使用、ゲインをホンの少し足すために大口からプレゼントされたマーシャル社製のディストーション、SHRED MASTERを噛ましている。勿論大口はいつもの2000。左右がマーシャルの為か非常にパワフルで硬質なブリティッシュ・サウンドという印象になった。プレイに関しては大口のソリッドなリフと、アキト節と人が呼ぶオブリ&ソロがフィーチャーされ、それぞれの良さは今回も遺憾なく発揮された。おっと、益々堅実さを増した家根谷のベース、レコーディングを重ねる毎に腕を上げる誠一郎のドラムも忘れちゃいけない。
カップリング曲の「HOT ROAD」は『STAND AGAIN』収録の俺のお気に入りの1曲。今まで何度となくライヴでプレイされてきた曲だが、今のメンバーになってからの「HOT ROAD」がベストだと言い切れる。「GO! LET'S GO!」コーラスも含め、歌の世界とマッチした疾走感は俺達5人ならでは。オリジナル・ヴァージョンの個人的な曲の肝は3コーラスが終わってからフェイド・インしてくる俺のこだわり、フィード・バックだ。18年前の今頃だったか、ロンドン郊外のコンフォーツ・プレイス・スタジオでのレコーディング。その広いスタジオの中、たった1人レスポールを抱えマーシャル・アンプに向かい、渾身の(笑)フィード・バックのテイクを録音しながら、自分がとうとうプロのギタリストになった事を実感したものだ。余談だが、この曲には俺の好きなアラン・シリトーの小説『長距離走者の孤独』のイメージとダブる所がある。主人公のスミス少年がまだ誰も起き出して来ない早朝、野原を駆け抜け、ひたすら走る。「奴ら」の鼻をあかしてやるために。そして想う、自分は世界にたった1人きりで、周りを取り巻く世界や権力に屈する事は決してない!と。そんなストーリーをギターで表現したかった。
あのフィード・バックを録った時の事は何故か今でも鮮明に覚えているんだ。新ヴァージョンは左右から1本ずつタイムを少しずらしてフェイド・インさせた。これが18年後の今のスタイルだからだ。
岩田のアイディアでリミックスされた「STRUMMER DUB」は80年代に大ブームだった12インチ・シングルを再現させようというモノ。あの頃はダンス・ミックスだの、誰それミックスだとか言って同じ曲が4ヴァージョンも入ってる12インチまであったものだ。くだらねぇ、と思いつつもカッティング・レヴェルが高くて音が良いからB.A.Dやスタイル・カウンシルの12インチ等は必ず買っていたものだ。
好みは別れるだろうが、俺は気に入ってるよ。曲が解体されリミックスされる作業に立ち会ったのも楽しい経験だった。
BASEMENT WISE Vol.2はストラマーズ・サウンドが紙面から聴こえてくるような仕上がりを誇り、同様に音源もたった3曲ながらロックとしか言いようのない音と我々5人のミュージシャン・シップが詰まった素晴らしい出来映えだと自負している。是非皆の手に届く事を願うよ。

本当は昨年の『SANDINISTA!』の次はコレだ、と決めてたんだけどCARBON/SILICONのアルバム発売という事件があったものだから順番が狂ってしまった…。
知ってる人もいるかと思うけど、エレン・フォーリーは当時のミック・ジョーンズの彼女だった女性ロック・シンガーである。2人はクラッシュのアメリカ・ツアー中に知り合い、恋に落ちた。仲睦まじく寄り添う2人のツーショット写真があちこちのロック雑誌のグラビアを賑わしたのが懐かしい。「今をときめくパンク・ロックのプリンスと新鋭女性ロッカーの恋」なんて言われていた。そういえばPLAYER誌に2人のポスター・カレンダーが付いていて、部屋に貼っていたっけな。
エレンの名前が世に知られるきっかけとなったのは1978年、アメリカの巨漢ロック・シンガー、ミート・ローフのアルバム『BAT OUT OF HELL』に参加し、「PARADISE BY THE DASHBOARD LIGHT」をデュエット、全米39位のスマッシュ・ヒットになった時だった。英国音楽業界にその名は知れ渡り、多くのアーティストからセッション参加を要請された彼女。そんな彼女の才能に目を付けたのが元モット・ザ・フープルのイアン・ハンターとミック・ロンソン、イアンのソロ・アルバム『YOU'RE NEVER ALONE WITH A SCHIZOPHRENIC』に参加後、1979年、ハンター/ロンソン・プロデュースによるデビュー・アルバム『NIGHT OUT』を発表したのだった。イアン及びモット・ザ・フープルをアイドルとするミックが彼女に興味を持ったのはそんな経緯からなのだろうか。そしてミックはイアン達を通じてニューヨークでエレンと出会った。
ミックの後を追ってロンドンにフラットを借りたエレン、程なく彼女はクラッシュ・ファミリーの1員として迎えられ、ミック及びメンバー全員の全面的協力のもとに作り上げたのがこのアルバム。PRODUCED BY MY BOYFRIENDとクレジットがある。更にミキシング・エンジニアはビル・プライス、ジャケット・フォトはペニー・スミスとクラッシュ関係者が脇を固め、全12曲中、なんと6曲がSTRUMMER-JONESの手になる作品だ。更にさらに凄いのがバックはほぼ全曲に渡りジョー、ミック、ポール、トッパーの4人プラス、タイモン・ドッグにミッキー・ギャラガー等いつものクラッシュ・ファミリーが総出演。ファンにはたまらない豪華キャストだ!そう、このアルバムは『SANDINISTA!』とほぼ同時進行でレコーディングされていた「裏」盤なのだ。それにしてもあの3枚組超大作を考えると、この時期のクラッシュの何たるクリエイティヴィティと仕事量だろう…
STRUMMER-JONESナンバーのメランコリックなオープニング「THE SHUTTERED PALACE」から『SANDINISTA!』でのカリプソ風味が聴かれ、クラッシュの豊かな音楽的進化と成熟を改めて思い知らされる。2曲目「TORCHLIGHT」は同アルバムの名曲「HITSVILLE U.K.」と同じくミックとエレンのデュエット、ミックの張り切り振りが微笑ましいポップ・チューン。その他の楽曲もこの時期のクラッシュらしい、様々な音楽的アイディアをクラッシュ流に消化した愛すべき曲ばかりで、それは『SANDINISTA!』の1番ポップな部分でもある。
クラッシュをバックに伸び伸びと歌うエレン、可憐な顔に似合わず野太い声の彼女だが、その歌声は凄く上手い訳ではないがエモーショナルで、彼女の女性ロッカーとしての魅力はその辺りにあるのだろう。俺にとっては何よりクラッシュがバックを勤めているという1点に於いて、もうこれは隠れた名盤として評価されるべきだと思っているのだが。とくに『SANDINISTA!』をこよなく愛する俺のような者にとっては、このアルバムへの興味は尽きない。
ミックとエレンの関係はミックのクラッシュ脱退と時期を同じくして終わったと言われている。バンドを追い出され、恋人とも別れたミックの当時の胸中やいかに…
硬派なイメージのクラッシュだが、ジョーの伝記映画を見るまでもなく、その陰にはロマンスがあった。彼らは若さを爆発させ、ロックし、精一杯生きた。ミックとエレンの恋が残したのは1枚のアルバム、このアルバムを聴く度に思う、おそらく俺達と何等変わらないであろう、彼らにもあった青春(!)や日常生活の事を。そして彼らがより身近に感じられる。そんな素敵なアルバムなのである。
ある日、このアルバムを聴き終えてから、イメージが湧いて来て曲が出来た。ちょっと感傷的なロマンチックな曲だ。Demoを作って岩田に渡したその曲はスタジオ・セッションで完成し「傷だらけの恋のメロディ」となった…。「ああ、2度と戻れないSTAIRWAY…」