2008年11月のロックンロール・レコード

[SIDE 59]  WHO ARE YOU / THE WHO(1978)

長年の念願だったザ・フーの来日公演を遂にこの眼で観る事が出来た。11/16 さいたまスーパーアリーナ。これまでレコードやCD、ビデオやDVDで何度も何度も繰り返し聴いてきた名曲の数々が繰り出され、目頭が熱くなる瞬間が何度となくあった。とくにアンコールの『TOMMY』メドレー。あの日、ロックで生きて行こうと誓ったあの日へと、俺の心は再び連れて行かれたように感じた。まさに「AMAZING JOURNEY」…。最高のライヴをありがとう!心からそう思う。でもでも、やはりあれはザ・フーであってザ・フーではなかった…。
ライヴ・ステージに於けるザ・フーの一番好きな所は何かといえば、それは4人のメンバーの化学反応から生まれるハイ・エナジーの壮絶な演奏だ。お互いがお互いを刺激しながらヴォルテージがどんどん上がって行き、聴衆のイマジネーションにパンチを喰らわせ、他のどんなグループも到達出来ない高みまで昇り詰め、どんなグループも見せてはくれない景色、そんなスリリングなシーンを味わわせてくれる唯一の存在。それがザ・フーの熱狂のステージだった筈だ。
オリジナル・メンバーの2人までもが亡くなってしまった今のザ・フーには残念ながらそれは無い。当たり前だ、そんなの判ってる。それを期待する方が間違ってるんだ。お前は過去の映像が頭に刷り込まれてんだよ。それも判ってる。あの頃とは違うんだと理解してライヴに臨んだつもりだった。だけど…ステージ上の完璧な演奏を前にして、たぶん俺は居るわけのないキース・ムーンのドラムとジョン・エントウィッスルのベースを聴こうとしてしまったのだ。
来日メンバーであるベースのピノ・パラディーノもザック・スターキーのドラムも良かった。とくにザックのドラムは叩く姿が父、リンゴ・スターにそっくりで、それはそれで感動したよ。
そして残された2人のメンバーは益々元気だった。ピート・タウンゼンドはジャンプこそしなかったが、風車ギター廻しを何度も披露してやはり本家はスゲーなぁ!と思わせてくれた。シャープなカッティングは少しの衰えもなく空気を震わせていた。(そう、ギターは一生懸けて習得するものだ!)
ロジャー・ダルトリーの堂々とした歌いっぷりも素晴らしい。マイクを振り回す往年のスタイルも健在で嬉しかったなぁ。
つまり2人とも無理なくザ・フーというモンスター・バンドを演じ、心から楽しんでいるという事。そう感じた。だからこれで良いのだ、今のザ・フーは。そう思い直した。
パンク旋風吹き荒れる1978に発表されたこの『WHO ARE YOU』。ザ・フーの歴史の中での評価はそれほど高くない。俺もそうだった、ピンと来なかったもの。一応買ったけど殆どターンテーブルに乗せる事は無かったように思う。他に聴きたいものが山ほどあった、生きのいいバンドが沢山あったから。ハード・ロックとパンク・ロックに押されてザ・フーは霞んで見えたものだ。
例えば、パンキッシュなイメージを打ち出したこの時期のストーンズに比べ、ザ・フーはいかにも野暮ったく映ったものだった。
本当に随分と時が経ってから改めて引っ張り出して聴いてみたら、思いのほか良くて、それからじっくりと聴き込むうちに好きになった、そういうアルバムなんだ。
このアルバムから感じられるのは、来るべき80年代に向けて新しいスタイルを築いて行こうと格闘するピート・タウンゼンドの姿だ。多用されるシンセサイザーやキーボード類が、今聴くといかにも古っぽいが、当時はそうだったのだ。80年代は打ち込みやキーボード類が著しく進歩し、サウンドも変化した時代である。ツェッペリンの『IN THROUGH THE OUTDOOR』も(同じくピンと来なかったが)そういう性格の作品だったではないか。そんな中にあってザ・フーとしてどうあるべきかと試行錯誤しながら作り上げたアルバムが『WHO ARE YOU』だ。タイトルも象徴的である。好みはあるだろうがピートの作曲能力の進歩とその高さに改めて驚く。ジョー・ストラマーとスティーヴ・ジョーンズに捧げたとピートが言う「GUITAR AND PEN」なんてまるでクイーンのようにオペラチックだが、やはり名曲だと思う。そして何年経っても古臭く聴こえないタイトル曲。すぐ思い浮かぶのは映画『THE KIDS ARE ALRIGHT』でのレコーディング・シーン、あれ大好きなんだ。子供のように無邪気なキース・ムーンと澄ました顔でギャグをやらかすジョン・エントウィッスルの姿が忘れられない。
そう、これはアルバム発表直後に亡くなった、キースの遺作でもある。ドラムス同様、破天荒な行動でザ・フーのワイルドさの象徴だったキースの死はバンドに致命的な痛手を与えたと同時に、まだライヴ未体験の日本のファン(俺のような)を大いにガッカリさせたものだ。これで最強メンバーによるステージを観るチャンスを永遠に失ってしまったのだから。
そして何年か前に今度はジョンも亡くなってしまった。「MY GENERATION」に象徴されるあのリード・ベースはもう聴く事は出来ない、って、話が振り出しに戻っちまった…
今回のセット・リスト(日替わりかも知れないが)で意外だったのは、このアルバムからタイトル曲だけでなく「SISTER DISCO」が入っていた事だ。勿論良い曲だけど代表曲ではない、決してベスト盤には入らないだろう曲。しかし敢えてやったという事は、おそらくピートはこの『WHO ARE YOU』を気に入っていて、作品として高く評価しているという事だろう。だからコンサートから帰ってから俺もまた聴き直したんだ。良いアルバムだよ。
さてライヴは終わってしまった…次は映画が待っている。『AMAZING JOURNEY』、バッヂ付き鑑賞券、勿論買ったよ!今度はキースとジョンにも会える事だろう。
(2008.11.19)

[SIDE 58]  VAN HALEN / VAN HALEN(1978)

ハード・ロックを夢中で聴いていたのはこの1978年までかな。この頃になるとさすがに耳も肥えてきて、ハードロックだけじゃなくもっと他にも世の中にはカッコ良い音楽があると判ってきたし、いつまでもしがみついていてもなぁ…とか考えるようになっていた。EW&Fが好きになったり、ブラック・ミュージックにも興味が湧いた。何と言っても当時は映画「サタデイ・ナイト・フィーヴァー」が大ヒットしていて、ソウル/ディスコ系(死語だね…)を聴いてる奴も周りに結構居たから影響もされたと思う。
大きな話題になったパンクも魅力的だったし、勿論『NEVER MIND THE BOLLOCKS』はすぐ買って聴き狂っていたよ。まぁあれは全てのロック・ファンを夢中にさせるアルバムだったけれど。クラスには髪を立ててポール・シムノンのベースばりのアクション・ペイントを施したシャツをこっそり学ランの下に着込んでる奴もいた。(一年後にそいつとバンドを組む事になる)
とりあえず俺はまだハード・ロッカーだった。髪もそこそこ長くて少しブリーチもしてたから、担任の体育教師には物凄く嫌われていたな。勿論こちらも大っ嫌いだったさ!
前置きが長くなってしまった。そんな訳で色々な音楽に対する興味に心を揺らしながらも、新しい刺激的なハードロックを求めて止まない俺の前に現れたとんでもないグループがこのヴァン・ヘイレンだったのである。「YOU REALLY GOT ME」をラジオで初めて聴いた時のショックは凄かった。こんなにカッコ良いギターの音ってあるかよ!やっぱりハードロックしかない!そう思った。すぐ輸入盤でアルバムを買って友人達と盛り上がったものだ。ハードロックに狂った青春時代の最後の象徴と言えるバンド、というかアルバムと言っても良い。だってヴァン・ヘイレンがそれほど好きかと聞かれたら実はそうでもなくて、あとは『1984』位だから。しかし、とにかくこのアルバムは特別な一枚、規格外の存在感を放つ凄いアルバムなのだ。今聴いても戦慄が走る程カッコ良いし、曲も完璧だ。そしてエドワード・ヴァン・ヘイレンのギター、今まで聴いた事のないライトハンド奏法を屈指した壮絶なプレイ。ペイントと改造を施したギターのルックスも魅力的だった。一切バラード無しの全曲ハードなナンバーはどれもキャッチーなメロディとサビを持った短い曲ばかりでこれも最高だった。泣きのギター・フレーズもあるけど一切の湿り気を感じさせず、綺麗なハモりのコーラスと共にひたすら気持ち良く駆け抜けて行く。その後のハードロック/ヘヴィ・メタル界に革命をもたらしたエディの本当の凄さは、この乾いた質感ではないかと思うね。ニッコリ笑って人を斬るようなあっけらかんとした恐ろしさを感じる。まだ二十歳をちょっと過ぎた位じゃないのか?!
そうしたら日本でアルバムが出るか出ないかの内になんと来日が決定してしまってビックリ!当時の常識では考えられない早さだ。そりゃ勿論行こうぜ!と盛り上がったね。そしてなんと余裕で最前列が取れてしまった…新宿厚生年金会館。この時点では一部のマニア以外まだこのスーパー・バンドの事を誰も知らなかった、という事か。決定から来日公演まで三ヶ月、その間にエディ及びヴァン・ヘイレンはあっという間に大きなセンセーションを巻き起こし、音楽雑誌やギター雑誌はヴァン・ヘイレン一色になってしまった。当然と言えば当然だろう。胸の開けたシャツを羽織ったセクシーなデヴィッド・リー・ロスの姿と、久々に現れたギター・ヒーロー、エディの存在もあって、新しいレッド・ツェッペリン的なハード・ロックの救世主と大いに期待されたものだ。チケットもやがてソールド・アウト。
若さを爆発させたそのコンサートはかなり粗削りだったと思うが、凄い盛り上がり、音がやたらデカかった。アルバム全曲をプレイし2枚目用の新曲も披露した濃厚な1時間半だったと記憶している。あの綺麗なハモりはベースのマイケル・アンソニーだったのかと驚いたな。アレックス・ヴァン・ヘイレンのドラムがイマイチとライヴ評で書かれたのだが、確かにモタッたり走ったりラジバンダリで安定してなかったかも。パワーは凄かったけど。エディは当然として、流石なのはデイヴ・リー・ロスで、あの人は始めから「あの」デイヴそのままだった。コミカルなキャラクターを持った一級のエンターテイナーだったよ。
そして翌年、超楽しみにしてたセカンドがこちらの期待が大きすぎたのか、つまらなくてガッカリ。理由はそれだけじゃないけど俺のハード・ロック熱は急速に冷めていった。
それでも再来日の武道館には何故か行った。一年で更にスケール・アップしたヴァン・ヘイレンは既に大物の風格を漂わせ、技術的にも完璧なパフォーマンスで観衆を圧倒したのだが、俺の心をときめかせたのは前座のP・モデルのパンキッシュなステージだった。俺は髪を切る事に決めた。
(2008.11.12)

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