Rock'n' Roll Records
◆[SIDE 59]  WHO ARE YOU / THE WHO(1978)
長年の念願だったザ・フーの来日公演を遂にこの眼で観る事が出来た。11/16 さいたまスーパーアリーナ。これまでレコードやCD、ビデオやDVDで何度も何度も繰り返し聴いてきた名曲の数々が繰り出され、目頭が熱くなる瞬間が何度となくあった。とくにアンコールの『TOMMY』メドレー。あの日、ロックで生きて行こうと誓ったあの日へと、俺の心は再び連れて行かれたように感じた。まさに「AMAZING JOURNEY」…。最高のライヴをありがとう!心からそう思う。でもでも、やはりあれはザ・フーであってザ・フーではなかった…。
ライヴ・ステージに於けるザ・フーの一番好きな所は何かといえば、それは4人のメンバーの化学反応から生まれるハイ・エナジーの壮絶な演奏だ。お互いがお互いを刺激しながらヴォルテージがどんどん上がって行き、聴衆のイマジネーションにパンチを喰らわせ、他のどんなグループも到達出来ない高みまで昇り詰め、どんなグループも見せてはくれない景色、そんなスリリングなシーンを味わわせてくれる唯一の存在。それがザ・フーの熱狂のステージだった筈だ。
オリジナル・メンバーの2人までもが亡くなってしまった今のザ・フーには残念ながらそれは無い。当たり前だ、そんなの判ってる。それを期待する方が間違ってるんだ。お前は過去の映像が頭に刷り込まれてんだよ。それも判ってる。あの頃とは違うんだと理解してライヴに臨んだつもりだった。だけど…ステージ上の完璧な演奏を前にして、たぶん俺は居るわけのないキース・ムーンのドラムとジョン・エントウィッスルのベースを聴こうとしてしまったのだ。
来日メンバーであるベースのピノ・パラディーノもザック・スターキーのドラムも良かった。とくにザックのドラムは叩く姿が父、リンゴ・スターにそっくりで、それはそれで感動したよ。
そして残された2人のメンバーは益々元気だった。ピート・タウンゼンドはジャンプこそしなかったが、風車ギター廻しを何度も披露してやはり本家はスゲーなぁ!と思わせてくれた。シャープなカッティングは少しの衰えもなく空気を震わせていた。(そう、ギターは一生懸けて習得するものだ!)
ロジャー・ダルトリーの堂々とした歌いっぷりも素晴らしい。マイクを振り回す往年のスタイルも健在で嬉しかったなぁ。
つまり2人とも無理なくザ・フーというモンスター・バンドを演じ、心から楽しんでいるという事。そう感じた。だからこれで良いのだ、今のザ・フーは。そう思い直した。
パンク旋風吹き荒れる1978に発表されたこの『WHO ARE YOU』。ザ・フーの歴史の中での評価はそれほど高くない。俺もそうだった、ピンと来なかったもの。一応買ったけど殆どターンテーブルに乗せる事は無かったように思う。他に聴きたいものが山ほどあった、生きのいいバンドが沢山あったから。ハード・ロックとパンク・ロックに押されてザ・フーは霞んで見えたものだ。
例えば、パンキッシュなイメージを打ち出したこの時期のストーンズに比べ、ザ・フーはいかにも野暮ったく映ったものだった。
本当に随分と時が経ってから改めて引っ張り出して聴いてみたら、思いのほか良くて、それからじっくりと聴き込むうちに好きになった、そういうアルバムなんだ。
このアルバムから感じられるのは、来るべき80年代に向けて新しいスタイルを築いて行こうと格闘するピート・タウンゼンドの姿だ。多用されるシンセサイザーやキーボード類が、今聴くといかにも古っぽいが、当時はそうだったのだ。80年代は打ち込みやキーボード類が著しく進歩し、サウンドも変化した時代である。ツェッペリンの『IN THROUGH THE OUTDOOR』も(同じくピンと来なかったが)そういう性格の作品だったではないか。そんな中にあってザ・フーとしてどうあるべきかと試行錯誤しながら作り上げたアルバムが『WHO ARE YOU』だ。タイトルも象徴的である。好みはあるだろうがピートの作曲能力の進歩とその高さに改めて驚く。ジョー・ストラマーとスティーヴ・ジョーンズに捧げたとピートが言う「GUITAR AND PEN」なんてまるでクイーンのようにオペラチックだが、やはり名曲だと思う。そして何年経っても古臭く聴こえないタイトル曲。すぐ思い浮かぶのは映画『THE KIDS ARE ALRIGHT』でのレコーディング・シーン、あれ大好きなんだ。子供のように無邪気なキース・ムーンと澄ました顔でギャグをやらかすジョン・エントウィッスルの姿が忘れられない。
そう、これはアルバム発表直後に亡くなった、キースの遺作でもある。ドラムス同様、破天荒な行動でザ・フーのワイルドさの象徴だったキースの死はバンドに致命的な痛手を与えたと同時に、まだライヴ未体験の日本のファン(俺のような)を大いにガッカリさせたものだ。これで最強メンバーによるステージを観るチャンスを永遠に失ってしまったのだから。
そして何年か前に今度はジョンも亡くなってしまった。「MY GENERATION」に象徴されるあのリード・ベースはもう聴く事は出来ない、って、話が振り出しに戻っちまった…
今回のセット・リスト(日替わりかも知れないが)で意外だったのは、このアルバムからタイトル曲だけでなく「SISTER DISCO」が入っていた事だ。勿論良い曲だけど代表曲ではない、決してベスト盤には入らないだろう曲。しかし敢えてやったという事は、おそらくピートはこの『WHO ARE YOU』を気に入っていて、作品として高く評価しているという事だろう。だからコンサートから帰ってから俺もまた聴き直したんだ。良いアルバムだよ。
さてライヴは終わってしまった…次は映画が待っている。『AMAZING JOURNEY』、バッヂ付き鑑賞券、勿論買ったよ!今度はキースとジョンにも会える事だろう。

(2008.11.19)
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