Rock'n' Roll Records
◆[SIDE 80] 闇に叫ぶ街 / The STRUMMERS(2012) -PART2-
★「さすらい」
思いきりポップなナンバーをアルバムに入れたいとの思いで作った曲。フィル スペクターが手掛けた60年代のガールズ ポップ グループ、クリスタルズやロネッツをイメージした。T-REXの影響もあるかな。だからアコースティック ギターを使おうと最初から決めていたんだ。右チャンネルの大口には普通にマーシャルでプレイして貰い、左チャンネルから俺のアコギ、そのコンビネーションをやってみたかったのでね。
持ち込んだのは割りと早い時期だったと思うけど、レコーディング前とはいえ毎日リハーサル出来る訳でもない俺達である。限られた時間の中、スタジオセッションの回数も残り僅かになった頃ようやく手を付ける事が出来た曲なんだ、実は。
なのでこの曲の録りはやや難航し何テイクも重ねる事になった。延々と続くサビのリフレインと、淡々と進む曲構成とその長さに誠一郎などは特に苦労したようだ。
さて、アコギを入れてみたものの、ラフMIXを聴いたら何かが足りない…頭で鳴っていたイメージとは違い地味で淋しく、何より「フツー」過ぎる印象。これはいかん…
そこでレコーディング エンジニアの栃木さんにリクエストした。アコギをアコギとして扱わずにエフェクト加工して欲しいと。グラム ロックなどで聴かれる無機質な音、アコースティックな温もりではなく、アコギなのにギラギラしたプラスチックのようなサウンドが欲しかったんだ。
栃木さんの見事な処理のおかげでまるでキーボードのようなウネウネしたサウンド、ナイスです。
録りから始まり苦労した甲斐あって、すげーお気に入りのトラック。
★「THE SHOW MUST GO ON」
ロックは巨大な思い込みだと言った人がいる。どうにもならない事を何とかしようじゃねぇかと言うのがロックだと。
これはたいした才能も無いまま、その巨大な思い込みだけでここまで来てしまった一人の男のヒーローへの感謝と恩返しの歌。
ロックは聴くだけじゃ飽き足らない。
★ラヴィアンローズ
大口作のズンズンと突き進むR&R。プレイするのが楽しい曲で俺大好き。こういうキャッチーなR&Rをサラッと作れるのが大口の才能と思う。いやホント、俺は頼りにしてるんだ。
サビからそのままGソロへと流れるあたり、ソロ裏のドラムロールとユニゾンするブラッシングなど、センスだね!
ライヴでやっていた曲だからレコーディングもバッチリ、苦労なく録れた。
この曲にはVOの別ヴァージョンがあと2つあって、アルバム採用ヴァージョンと合わせると3つの違った岩田の歌が存在するのだ。
一つはより荒々しく力の籠ったやつ、もう一つはより力を抜いたリラックス ヴァージョンと言ったら良いかな。だけどアルバム採用ヴァージョンがやっぱり一番と思う、当然だけど。
個人的な見解だが、「さすらい」もそうだけど岩田というヴォーカリストの最も魅力的な「いい声」が、こういう歌で聴く事が出来ると思うな、俺は。
「いい声」で歌う事が全てじゃないけどね。
VO別ヴァージョンは30年後に発売予定の『スーパー デラックス エディション』に…って、もういいか…(笑)
★「87 BULLETS」
今回の楽曲の中で一番作曲に時間を掛けたのがこの曲。密度の濃いずっしりと聴きごたえのある曲にしようと意気込んで作った。かなり入れ込んだと思う。
刑務所を脱獄した男。サーチライトから身をかわし、鉄条網をくぐり抜け自由を求めて荒野を駆けて行く。ポール マッカートニー&ウィングスの「BAND ON THE RUN」じゃないけど、そんなイメージが漠然と頭にあって作曲作業は進んで行った。仮タイトルもずばり「JAILBREAK」と呼んでいたくらいだから。
細部に渡ってこだわり、Gパートも入念に考えてデモ テープを作った。
3連の派手なイントロからメンバーがそれぞれ順に入って来て…確かに大作と言えば大作だし、モノにするのに時間も掛かるだろうな…なんて心配もしながら持ち込んだんだけど俺には確信があったね、バンドでやったら絶対に良いと!
そしてそれは間違いではなかった。
俺の好きな70'sロックのエッセンスが随所に散りばめられているこれもお気に入りのナンバー。
★「ERA,ERROR」
クラッシュのファースト アルバムに入ってる「WHAT'S MY NAME」。俺はこの曲が昔から妙に好きで、今でも聴くとテンションが上がる。でもさ、一般的に見て、恐らくクラッシュの楽曲の人気投票をやったとしたら、まず上位に入ってくる事は無いだろうなと思う。
では何故好きか?それはこの曲のイントロが震える程カッコ良いからだ。
ストーンズの「GIMME SHELTER」と同じように戦慄が走るのだ、イントロを聴くと。
Aメロと全く同じように進むコード進行に被さるミック ジョーンズのリードG、これが凄い!普通あのコード進行にあのフレーズは思いつかない。まさにミックが天才的なメロディセンスを備えている事の証である。何せ最初コピー出来なかったもの、フレーズは解るけどその後ろのコード進行が…??
って感じだった。
これはその「WHAT'S MY NAME」を目指して作り始めた、ちょっと暗めの曲。残念ながら俺のセンスはミックには遠く及ばないようだ…(泣)
少し軌道修正し、緊張感のあるイントロを付けてみた。歌詞のテーマは重たい。しかしそのおかげで独自の魅力を持った曲に変貌を遂げたのだった。
★「荒野へ」
ラストは俺達らしい曲で。
テーマは「ストイック」。バラエティ豊かなアルバムの締めに天然色は無しだ。
今でも生々しく思い出される東日本大震災。あの時、福島原発のメルトダウンに伴い俺の住む街は計画停電に見舞われた。
仕方ない事だと思った。
電気が無事供給されている時間帯でさえギターをアンプで鳴らす事はためらわれた、そんな日々だった。だからアコースティック ギターを弾く事が多くなり、この曲もアコギで作った。このラインの曲は得意なので良い仕上がりになるのは解っていたんだけど、得意なだけに以前作った同ラインの曲と差別化する事が重要なテーマでもあったのだ。
俺達らしいと言ったけど、言い換えれば俺らしいという事で、それは自覚していたからね。
ただアコギ作曲がもたらしたのか、穏やかな歌い出しのメロディ。結果として「MARCHING ON」などとは違った魅力を持った曲になったね。岩田が歌メロに更に磨きを掛けてくれたので、完成度もぐっと高い名曲が誕生。ひたむきな思いを綴った詞の世界も凄く良いと思う。
ストイックにバッキングを刻み、全てが歌に収束する、これが理想であった。だからギターのオーヴァーダブも極力抑え、入魂のGソロ(笑)に全てを賭けたと言う訳である。
因みにイントロさわり部分のギターは「何かが欲しい…」との岩田のリクエストに答えたもの。
この曲は何よりメンバー全員の気迫の籠った見事なプレイが素晴らしい。
大口の刻み、メロディアスな家根谷のベース、タイトな誠一郎のドラム、どれをとってもロックである。
特にラストソングを狙って作った訳じゃないんだけど、岩田の強い意向と大口の賛同に後押しされる形で最後を飾る曲に。
★以上11曲。これが『闇に叫ぶ街』だ。
音の向こうにキラキラと生きている5人のメンバーが見えるだろうか?それが重要なんだ。果たして傑作かフツーか駄作か?それは聴く人の判断に任せたい。
俺達は楽しみながら、あがきながら、一番好きなモノに夢中で取り組んだ。ただそれだけなのだから…。
(2012.04.03)
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