Rock'n' Roll Records
◆[SIDE 102] LUST FOR LIFE / IGGY POP (1977)
イギー・ポップの最新作『POST POP DIPRESSION』、ズッシリと聴き応えのある力作でずっと聴いている。
と、前回の続きではないけれど、デヴィッド・ボウイとは切っても切れない存在と言っていいイギー・ポップ。
こんな言い方をするのはボウイのファンになった流れでイギーの事を知ったからで、ストゥージズの後、ソロで復活した第一弾『THE IDIOT』が出会いだった。デヴィッド・ボウイのプロデュース、丁度ボウイの「ベルリン時代」と重なる時期に出たアルバムだった。

『THE IDIOT』はダークで重たいムードに包まれた作品だった。「CHINA GIRL」のようなポップな曲もあったが、全体的には当時のボウイの傑作『STATION TO STATION』から『LOW』へと続く頃のヨーロッパ的な暗さを持ったサウンドが継承されていたものだ。

何と言っても俺はセックス・ピストルズがカヴァーした「NO FUN」やダムドの「I FEEL ALRIGHT」を聴くまではストゥージズなんて知らなかったから、
イギー・ポップのワイルドかつ破天荒なロックンローラーとしての姿は知る由もなかった訳で、これを聴いて、「うーむ…」と思った。そうか、ボウイ・タイプの知的なムードを持った「ソロ・アーティスト」なんだな、と。
それはイギーとボウイが狙った新たなイメージを打ち出す戦略だったみたいで、それは見事に功を奏したと言えるだろう。

元々シンガーとしてもソングライターとしても大きな才能を持ったアーティストだと思う。
類い稀なるパフォーマーでもある。
ただどうも周囲の期待につい応えようとしてしまうらしく、ファン・サーヴィス過多で才能を上手く活かし切れない性格だとの声もある。

またストゥージズ時代の強烈な経験故にソロ名義でも「バンド」に強い拘りを持ち続け、作品作りに於いてもバンド単位でのライヴ的な音を好み、自らをバンドの一員と捉えてメンバーにも気を使う、そんな人らしい。
自分のエゴよりもバックのメンバーの嗜好をつい尊重してしまい、その結果作品が散漫なモノになってしまう事もある、と。

デヴィッド・ボウイはそんなイギーの人間味や良さをよく理解した上で、「ソロ・アーティスト」としてタフに生き抜く知恵とアイデアを注入して来たように思う。
イギーの長いキャリアの節目節目でボウイはアルバムをプロデュースし、それらはどれも秀れた作品ばかりである。

そう、パンクの嵐が吹き荒れる1977年にリリースされたこの『LUST FOR LIFE』こそイギー・ポップの決定盤と言える名作。最高にカッコ良いアルバムだ。『THE IDIOT』から僅か半年後のリリースだった。
まさにパンクの「ゴッド・ファーザー」としての面目躍如である。
ニッコリ微笑むイギーのポートレートがこの作品への自信と手応えを表しているように思える。

「何が何でも生きたいんだ!」とサヴァイヴァル宣言するオープニングのタイトル曲「LUST FOR LIFE」から最高。
ポジティブなエネルギーに満ち溢れ、溌剌とした歌声。
強烈なドラムビートに乗ってステージに跳び出してくるイギーの姿が眼に浮かぶようだ。
まさしくイギーが好むライヴ的なバンドサウンドで統一されたアルバムである。

前作同様、ボウイが作曲、イギーが作詞を担当した曲が中心で、やはりそのコンビネーションの相性の良さを痛感する。ボウイの才能にも感服だ。
マイナー・キーの曲が多いが、「SIXTEEN」を始め、キャッチーなギターフレーズを持った「SOME WEIRD SIN」などパワフルな印象だ。イギー自身の喜びをストレートに表現した「SUCCESS」、「NEIGHBORHOOD THREAT」のカッコ良さ。
あと個人的に大好きな「TONIGHT」なんて如何にもボウイで、ドラマチックなイントロはモット・ザ・フープルを思わせるものだ。
リッキー・ガーディナー作の哀愁を帯びたダンス・チューン「THE PASSENGER」は言うまでもない名曲。

それにしてもイギーのヴォーカルは最高だ。
そのスタイル。低いトーンから朗々と始まり、ジワジワとテンションが上がって来て、クライマックスでエモーショナルに爆発する変幻自在なその歌いっぷり!
ブルースでもR&Rでも、ファンクだってバラードだってイギーが歌えば全てオッケーという説得力がある。

これ以降のイギーはコンスタントに活動を続け、アルバムを発表するもののもうひとつ焦点が絞りきれずに強いインパクトを残すアルバムを作る事が出来なかったようだ。
この時期は、例の人の良い性格とサーヴィス精神が災いして、との評価で語られる事が多い。

そして、1986年にまたもやデヴィッド・ボウイと組んで出したのが『BLAH-BLAH-BLAH』。
これがまたカッコ良くて、思わず嬉しくなって笑ってしまった。
元セックス・ピストルズのスティーヴ・ジョーンズのギターも聴ける作品だった。

今でもよく覚えてるけどプロモーションで来日してテレビ番組の「ベストヒットUSA」に出演、小林克也氏のインタビューに答えてボウイについて話していた。
「才能はあるし、金持ちだし、おまけにハンサム、やんなっちゃうよ…」
みたいな事を言っていて、イギーの人間性が良くわかるインタビューで面白かったなぁ。

そして1988年、ビル・ラズウェルと組んだ『INSTINCT』。これがメチャクチャカッコ良い大傑作だった!
ここからがイギーの黄金時代と言っても良いかも知れない。
1990年代に突入してからも熱いアルバムを発表し続けて行ったものだ。

そして2016年、『POST POP DIPRESSION』はラスト・アルバムになるかもしれない、なんて言われているが、まだまだイギーの活躍を期待して止まない俺である。

(2016.06.10)
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