Rock'n' Roll Records
◆[SIDE 105] WHO / THE WHO (2019)
ザ ・フー、13年振りのニューアルバム。

しかし2019年も終盤に差し掛かるこの時期にまさかザ ・フーの新作が登場するとは思わなかった。

しかもこれは大傑作ではないか。

前作の『ENDLESS WIRE』は残念ながら期待外れの作品だった。
何やら落ち着き払った地味な曲と演奏には、ガッカリした。
「ああ、もうザ ・フーならではの溌溂としたR&Rはもう聴く事は出来ないのかな、、?」
なんて思ったものである。

しかしこの瑞々しいサウンドはどうだろう。
ピート・タウンゼントの衰えぬ創作意欲、そしてザ ・フーへの情熱にはひたすら感服するしかない。

新作についてのアナウンスがネットに流れたのは9月の事、そして同時に新曲「BALL AND CHAIN」が公開された。

最初「BALL AND CHAIN」と聞いて「わー、ジャニスのあの曲か?!、シブいとこ攻めて来るなぁ、、」とニヤリとした。
因みにその曲とはジャニス・ジョプリンがアルバム『CHEAP THRILL』で歌ったビッグ・ママ・ソーントンのカヴァーの事である。
マイナーキーのリズム&ブルース曲でジャニスの熱狂的なヴォーカルが堪能出来る代表曲と言っていいだろう。

そして2019年の今年は1969年の伝説のウッドストック・フェスティバルから50周年を迎えた年であり、俺もこの夏はその記録映画を改めてじっくりと観直したりしていた。
50年前の夏、ザ ・フーやジャニス・ジョプリンはウッドストックのステージに立ち、熱狂のステージを繰り広げた。

この映画でのザ ・フーの圧巻のパフォーマンスは俺を大ファンにするのに充分なインパクトだった。

だからザ ・フーの新曲がジャニスのカヴァーだとしても何の不思議も無いように思えたのである。

だが結果としてはこの曲はジャニスとは同名異曲、ピート・タウンゼントのオリジナルだったが、、、

しかし、1969年を思い返せば、代表作中の代表作でザ ・フーの代名詞と言ってもいいアルバム『TOMMY』から50年にもなる訳で、昨今のビッグ・ネーム達同様に『TOMMY』の50周年記念盤が出るのか?と思いきや、リイシューアルバムではなく、登場したのは新作だった事が本当に嬉しかったね。

早速聴いた「BALL AND CHAIN」だが、キーボードを織り込んだコンテンポラリーなサウンド、スローテンポで重厚な曲調は最近のザ ・フーのやり方であり、それは決して悪くはないけれども、せっかくのアルバム先行曲ならばもっと軽快でポップなナンバーが良かったなぁと思ったのが率直な感想。

ザ ・フーやストーンズには「老いたとしてもまだまだ若々しさは失っちゃいないぜ、、」というバンドでいて欲しいからね。
これはいちファンの勝手な思い込みではあるけれど、、。

そんなこちらの思いに応えてくれたのが第2弾として公開された「ALL THIS MUSIC MUST FADE」である。
アルバムのオープナーでもあるこの曲はもう最高である。
アッパーで軽快なノリ、ザ ・フーならではのビートナンバー、カッコ良い!

これが聴きたかったのだ。

短いイントロダクションから飛び出して来るロジャー・ダルトリーの歌声も実に若々しい。それに絡むピートの柔らかいコーラス、これぞザ ・フーのR&Rである。

ピートは自らを「老人」と自覚して「ロマンスやノスタルジーからは出来るだけ離れようと思った、、」とか「人を不快にはしたくないからね、思い出なら構わないが、、」なんてインタビューも読んだが、いやいや、活動を総括するような内容の歌もあるし、ザ ・フーと名乗る前のバンド名であるザ ・ディトゥアーズをもじった「DETOUR」なんて曲もある。

1曲目の「ALL THIS MUSIC MUST CHANGE」が終わり、静かに流れるピアノイントロに導かれ始まる「BALL AND CHAIN」にゾクゾク来た。そこから甘く切ない「I DON'T WANNA GET WISE」〜ボ・ディドリー風ビートのリズム&ブルースの「DETOUR」へ、この辺りの流れにはザ ・フーファンならば誰もが夢中になってしまうに違いない。

アルバム・ジャケットはビートルズの『SGT. PEPPER'S〜』やポール・ウェラーの『STANLEY ROAD』、ザ ・フーでは『FACE DANCES』などを手掛けたイギリスのポップアート界の巨匠、ピーター・ブレイクのデザイン。
ひと目見て判るザ ・フーの世界。
これもいいね。CDよりアナログ盤で手に入れたい、と思ってしまう。

トータルで完成度は文句なし、数あるザ ・フーの名作群と堂々と渡り合える傑作アルバムに仕上がっている。
全く凄いとしか言いようがない。

オリジナルメンバーのキース・ムーンもジョン・エントウィッスルも既に他界してしまったが、サポートを務めるドラムのザック・スターキーとベースのピノ・パラディーノをはじめとする素晴らしいミュージシャンの働きもめちゃくちゃ大きいと思う。

これが最後の作品か?!

それは誰にもわからないだろう。

あとは来日公演、是非お願いしたい!

(2019.12.18)
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